アルファリポ酸

アルファリポ酸(チオクト酸)概論
アルファリポ酸は、1951年に、ジャガイモから分離された、ビタミン様化合物である。
脂質、或いは細胞の脂肪性領域と関連して見いだされたので、リポ酸と命名された。

アルファリポ酸は、主要な食事源として、動植物界に広く存在し、また、体内で合成されるので欠乏症は無いと考えられた。
したがって、ビタミン類似物質、或いは条件つきの必須栄養素に分類されている。

肝臓は、基本的な代謝に必要なだけのリポ酸を生産する。
しかし、細胞のある種のストレス状態下では、アルファリポ酸は充分な量が合成されない。
最近の研究では、特に年をとった人で、これらの供給が最適レベル以下に落ちることを示している。

高い酸化ストレスのような特定の状況では、、アルファリポ酸の体内生産は、最高の防御に不十分である。

投与量が50〜600mgで吸収率は同じ、空腹時によりよく吸収される。
放射性の研究で、投与された用量の93%が吸収される可能性があり、肝臓で分解され、約30%だけが実際に血流に入る。

パッカー博士によると、血液のリポ酸の半減期は、比較的に短く、6〜8時間である。

働き
アルファリポ酸の主要な働きは、ミトコンドリア内のクレブス回路と呼ばれる、食べ物からエネルギー変換過程で、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、アルファケトグルタル酸デヒドロゲナーゼなどのいくつかのデヒドロゲナーゼ酵素の共同因子として作用する。

最近の証拠は、強力な抗酸化剤としてのアルファリポ酸の重要な役割が注目されている。

アルファリポ酸は、比較的小さな分子であり、効率的に吸収されて、容易に細胞膜を横断し、体内のどこにでも移動することができ、細胞膜のような脂肪性の環境と、同様に、細胞の大部分を構成する水溶性環境との、両方で細胞全体をフリーラジカルから保護することができる。

アルファリポ酸、ビタミンC、ビタミンEは、体を活性酸素から守る最初の防衛ラインとして働く、チームとなって働く時に最も効果的であると考えられている。
水溶性のビタミンC、脂溶性のビタミンEと異なり、アルファリポ酸は、体内の脂肪が多いところでも水分の多いところでもフリーラジカルを消去できる能力を持つ。

強力な酸化防止剤として働く以外に、金属元素をキレート化する働き、グルタチオンという物質を合成する過程で使われる。

活性酸素の消去
クレブス回路における、食べ物のエネルギー変換には、フリーラジカルの生成が起こる欠点がある。

ミトコンドリア組織から、一つの電子が時々漏出し、分子酸素がその電子を取り込む。
分子酸素に一つの電子が転移するのは、異常な、高度に反応性のある、一つの不対電子(フリーラジカル分子)をつくる。

エネルギー生産のために、細胞に供給される酸素のおよそ2%は、高度に反応性と毒性を持つフリーラジカルに変わる。
このパーセンテージは、年をとるにつれて増加する。
この転換量は大きく、1年につき、酸素ラジカル1キログラムが生産される。

フリーラジカル損傷の蓄積は、細胞の能率低下の原因となり、エネルギーの欠乏になり、免疫系機能の低下となり、老化の原因となる。

フリーラジカルが消去されないと、タンパク質、脂質、DNAを含む重要な細胞の構成要素と反応して、損傷を与える。

アルファリポ酸は、これらフリーラジカルが、細胞分子を損なう前に、直ちにフリーラジカルの不対電子と結合し、無効にし、したがって、細胞を損傷から護る。
アルファリポ酸は、強力な抗酸化剤で、他の細胞の構成要素よりも、不対電子とより高い結合性があることを意味する。

アルファリポ酸は、さらに、フリーラジカルと結合する積極的な傾向のため、細胞の他の抗酸化剤を、著しく節約する効果があることが示された。
例えば、ビタミンC、E、グルタチオンは、極めて重要な細胞の抗酸化剤で、フリーラジカルと反応する。
しかし、アルファリポ酸分子が、最初にフリーラジカルに結合すれば、ビタミンCとEは解放される。

さらに、リポ酸は、また、潜在的に他の抗酸化剤を再生することができる。
アルファリポ酸は、グルタチオン(GSH)レベルを高める。
グルタチオンは最も重要な水溶性抗酸化剤で、生体異物、シグナル伝達の調節、プロスタグランジン代謝、免疫応答の調節、酵素活性の制御、ペプチドホルモン、その他の解毒に関与する。
そして、アミノ酸システインの利用率がグルタチオン合成で律速因子として知られている。

体が種々の病気、感染、外傷、薬物療法、環境毒素、手術などから高レベルな酸化ストレスを受けると、グルタチオンは急速に枯渇する。

グルタチオン欠乏は、また、タンパク低摂取量、糖尿病、肝疾患、白内障、HIV感染症、呼吸窮迫症候群、ガン、特発性肺線維症と関連している。
保健専門家は、ビタミンサプリメントの処方にアルファリポ酸を含めることを推薦する。

動物と細胞培養研究では、サプリメントのアルファリポ酸が、年老いた、非能率的なミトコンドリアを、より若い外見と活性に変換する能力を証明した。
この本研究は、高齢者のアルファリポ酸サプリメントの摂取を支持する。

さらに、追加的な研究は、アルファリポ酸で治療された年とった動物の、学習能力と活性レベルの著しい改善を証明した。

研究では、アルファリポ酸が脂質の酸化を防ぎ、神経機能や神経性血流を促進することを明らかにしている。

血糖代謝を改善し、インスリン感受性を増し、酸化防止効果を持つ。
アルファリポ酸は、筋細胞上部で、glut-4輸送体の数を増加させることによって、筋肉が血流から吸収するグルコースの量を増加させる。
アルファリポ酸は、また、高血糖と同様に低血糖症を防ぐことができる。

臨床応用として、糖尿病、糖尿病性多発ニューロパシー、白内障、緑内障、心臓病、虚血-再かん流損傷、脳卒中、天狗茸キノコ中毒、アルコール性肝炎、肝硬変、アルコール性膵臓障害、老化に伴う疾患(難聴の予防)、HIVなどに効果が期待される。

リポ酸は、糖尿病性神経障害と糖尿病性腎障害に有効である。
酸化ストレスは、糖尿病で後期の微小血管障害性の合併症進行の中心的な役割をする。

リポ酸を与えられた糖尿病患者の治療は、酸化ストレスと尿アルブミン排泄率を低下させ、内皮細胞損傷の進行を遅くする。

リポ酸の一番興味深い特質は、糖尿病性の症状に対抗して、高い血糖を防止する能力である。

リポ酸は、脳に簡単に入り込める唯一の酸化防止剤であり、脳で強力な抗酸化剤として作用し、脳卒中による損傷から脳を守るのに有効である可能性がある、おそらく脳細胞を毒素から保護することができる。

アルファリポ酸による治療の可能性は、アルツハイマー型痴呆、パーキンソン病、ミトコンドリア機能不全、他の神経疾患を含むかもしれない。

年老いたラットにリポ酸とアセチルカルニチンを併用したところ、記憶を向上させた。

アルファリポ酸は、風邪の後の、嗅覚の喪失を再生するのを手伝う。

アルファリポ酸は、味覚障害をもつ患者の治療に効果があった。

脳の重要な部分で遊離鉄が多すぎることは、パーキンソン病の原因とし考えられている。
動物実験では、リポ酸が老人の脳で鉄の蓄積をかなり低下させる。 また、アルファリポ酸は脳でグルタチオンのレベルを増加させる。
培養で、アルファ-リポ酸が、血管内皮細胞の接着分子の生成と単球の付着を有意に妨げた。これは、アテローム硬化と炎症性状態の予防に効果的であることを示す。
アルファ-リポ酸は有効な金属キレーターで、金属元素が接着分子の生産に関係すると推定された。

アルファ-リポ酸は、齧歯動物の食物摂取を抑制し、エネルギー消費を増加させることによって体重を減少させた。

アルファ-リポ酸は、喘息のマウスの気道炎症と反応高進を妨げた。
アルファ-リポ酸を5%含んでいるクリームによる局所治療は、光線老化肌の上で有益な効果を示した。

アルファ-リポ酸は、キレート化剤で、砒素、カドミウム、水銀を体から除去することができる。
重金属中毒の有害な作用の一部は、酸化障害と関連している。
加えて、リポ酸の抗酸化剤特質は、重金属の有害な影響を低下させる。

一方、銅、マンガン、亜鉛イオンと安定な複合体を作り、ミネラルを体から取り除く働きがある。
アルファリポ酸の研究において、血液中の鉄の量が、有意に減るのが示された。
規則的な血液試験で鉄のレベルをモニターしなければならない。

リポ酸がHIVの逆転写酵素の活性を減らすことによって、増殖を妨げることができる。

欠乏症
乳酸の蓄積による筋痙攣、筋肉量減少、脳萎縮。

サプリメント
一般的な合成サプリメントの「リポ酸」は、2つの異なる「リポ酸」分子の半々の混合物で、ラセミ化合物と呼ばれる。
自然のR−リポ酸は効果があり、不自然なS−リポ酸は効果が全く無い。

R−リポ酸は、S−リポ酸より容易に吸収され、細胞に取り込まれる。
R−リポ酸の有効性のために、S−形態は、サプリメントから純粋に取り除くのがよい。

アルファリポ酸投与量
1日、50〜100mgの用量は、合理的なようである。
ドイツにおいては、糖尿病で高血糖症の損傷を防ぐために、1日600mgの投与量が処方される。
キノコ中毒を治療するためには、静注で1200mgが投与される。

副作用と毒性
イヌの経口服用の後のLD50は、およそ400〜500mg/kgである。
5〜20mgの低薬量ではどんな副作用もない。
高用量では、吐き気、下痢、或いは胃の不調の原因となる、また、めまい、皮膚炎、疲労と不眠症を起こすことがある。

50mg以上ではたとえ朝摂っても、不眠症の可能性がある。
リポ酸は、投与量で1日1800mgまで、有意な副作用は無い。

高用量は、また、血糖を低下させる可能性があるので、血糖レベルのモニタリングを必要とする。

アルファ-リポ酸の高用量は、チアミン欠乏が疑われる患者に与えられてはならない。

人において、報告された副作用は、糖尿病患者でグルコース利用が向上する結果として、アレルギー性の肌と低血糖症の可能性がある。

幼児、妊娠、授乳中の女性、或いは、ひどい肝臓疾患、腎臓疾患のための安全性は、確立されていない。

自然の抗酸化栄養素には、ビタミンA、E、C、アルファリポ酸、ベータカロチン、その他のカロチノイド、セレン、葡萄種子エキス、その他フラボノイド、植物性色素、フランス海洋松の樹皮のエキス、補酵素Q10、グルタチオン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)がある。

医師と相談
下記の医薬品を摂っている場合、アルファにリポ酸をとる前に、医師と相談することが重要である。
アミカシン、ゲンタミシン、シスプラチン、シクロホスファミドとレボチロキシンのような甲状腺を調整している薬物療法。


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